ロマンらんちゅうの世界 〜 と、 ついでにペンギン日記


魚を起こす時期(一般例)
らんちゅうは,最低水温が10℃を上回るようになると,冬眠から目覚めて活動を開始しますので,「暑さ寒さも彼岸まで」のとおり,通常,気候が安定してくる春分の日前後を目安に,第1回目の水替えをして魚を起こし,1ヶ月後の採卵を目指して繁殖作業を開始するのが良いとされています。

また,桜の開花とともに繁殖シーズンが始まる…とも言われており,地方によりそれぞれ気候が異なることから,南国,北国などでは,この桜の開花を目安にする方が理にかなっていると言えるでしょう。

最近では,ビニールハウスやヒーター等で加温をして,一足早く繁殖作業を開始する人も見受けられますが,この目的は,言うまでもなく,他所より魚を早く,大きく仕上げることにあり,その外に,稚魚の育成時期をミジンコ採集の最盛期に合わせること,また,入梅までに魚の基礎を作り上げておくことなども目的としてあるようです。

しかしながら,5月中旬以後での採卵でも,秋には十分に魚を仕上げてくる人もいますし,早く仔引きしても,労力の割に思ったほどの成果は上がらないことも多くあって,どの時期に魚を起こすのが良いかということについては,ケースバイケースで一概には言えないようです。
魚を起こす時期(私の場合)
私の場合も,最低水温10℃で魚を起こし,1ヶ月後の水温15〜20℃での採卵を一応目安にしていますが,割合温暖な当地方においても,近年春先の気候変動が大きく,暖冬気象もあって,2月に入るとかなり暖かい日もあり,3月には寒の戻りが何回かあったり,4月に入っても気候が安定しないことが多いなど,昨今の異常気象には毎年苦慮しています。

したがって,自然水温に任すと,折角魚に繁殖の兆候が表れても,急冷えがあると水を差される形となり,それを何度か繰り返すと,繁殖に失敗してしまうケースも考えられるため,どうしてもヒーターを使用して,最低水温を調整する必要が生じてきます。

水温がしっかり安定するのは,ゴールデンウィークに入ってからとなりますので,あまり早く起こすと,電気代の負担が大きく,水替え時の温度合わせ等の労力を考えると,できれば遅い方が良い訳ですが,3月になるとポカポカ陽気の日もあって,水が急激に悪化する恐れもあるため,魚と相談しながら起こす時期(第1回目の水替え日)を決めることになります。

私の場合,ミジンコの採集時期のピークが4月一杯であること,また,選別作業の重点を連休中に置きたいこともあって,一応4月初旬の採卵を目安にし,起こす時期を3月初旬に設定していますが,ここ2〜3年は暖冬で,2月下旬には水質の悪化も見られたことから,若干予定より早く起こすことが多いのが現状です。
起こし方
2〜3ヶ月の長期にわたり,低水温の中で冬眠していた魚も,春の訪れとともに活動を開始し,徐々に泳ぎも活発になって,盛んに池底の苔類をつつくようになりますと,暖かい日が続きそうな時期を見計らって,今年第1回目の水替えをします。

水替えといっても,極力魚に刺激を与えないよう,細心の注意を払う必要があり,元水を糞濾して残し,容器をきれいに洗って,不足分を新水で補うというのが一般的ですが,青水が濃い場合は1/3〜1/2程度の新水を使用することもあります。

その後2〜3日魚の状態を観察し,苔等の摂餌動作があることを見届けた後に,消化の良い餌(アカムシ又は水に浸した人工餌)を軽く与え,徐々に量を増やしていき,また,水替えを7〜10日毎に行っていきますと,水温が上昇するにしたがって活動も活発になり,1ヶ月程度経過すると繁殖行動の兆候が表れるようになります。

なお,起こした後は,極力最低水温が10℃を下回らないよう留意する必要があります。
交配,採卵について
冬眠から明けて,水替え,給餌を重ね,そして,1ヶ月程度経過して水温が15〜20℃になりますと,いよいよ繁殖の準備が整います。

♀魚は腹が膨れ,柔らかくなって,生殖器が赤みを帯び,容器の隅等産卵場所を探すような素振りを見せ,また,♂魚は胸ビレに追星と言われる白い粒状のものが表れて,追尾行動を起こすようになります。

交配は,新水を張った容器に,敷き巣,産卵巣を入れ,産卵予定日の前日の夕方♂,♀を同居させます。スムースに行けば,翌早朝には,♂が♀を追尾し,1〜2時間程度で産卵が終わる訳ですが,雨上がりのような曇った日が産卵に適しており,よく晴れた朝で,冷え込むような日は産卵しないことが多く,その場合はそのまま翌朝の産卵を待ちます。

産卵が終わりますと,卵が食べられないように産卵巣から親を分離し,また,♂,♀も分離し,1〜2日餌を控えて休養させます。(参照…私の工夫)

なお,私の場合は人工授精が主流です。(参照…人工授精について)
孵化から立ち上がり
らんちゅうは繁殖行為が苦手であるため,自然産卵での受精率は60〜70%が普通であり,人工授精であれば90%以上は可能です。自然産卵の方が魚の出来が良いとこだわっている方もおられますが,真偽のほどはわかりません。

産卵から孵化までに要する日数は,水温により異なりますが,17℃程度で5〜6日が好ましいとされており,孵化してから,毛仔が立ち上がる(身体が伸びて泳ぎ出す)までの2〜3日は20℃前後の水温が良く,15℃以下は大変危険な状態になります。

この孵化から立ち上がりの期間の管理は重要で,これを誤って,立ち上がりの悪い魚が多く出た場合は,奇形が多くなり,一番選りで残す魚がほとんどいないという結果に終わることもあるくらいです。
餌付け
孵化直後の毛仔は,ほとんど泳がず,産卵巣や容器の底等に横たわって寝ており,2〜3日経過して,さいのうの栄養分を消費してしまってから,自立して餌を求め泳ぎ出しますので,その時点から餌付けを開始します。

初期餌料としては,ブラインシュリンプが栄養価も高く,最も手軽で効率的ですので,これを10日程度与えます。この時期は24時間餌を食べますので,できるだけ多く与えたいところですが,シュリンプは真水では2時間程度しか生きられないため,一度に大量に与えると,食べ残しが死骸となり,腐敗して水質を悪化させてしまいますので,何回かに分ける必要があります。

2時間置きに適量与えるのが理想ですが,なかなかそうもいかず,私の場合,朝の5時と7時半,正午(家人に頼める時),そして,夕方6時と7時半に与えています。

この時期餌が不足しますと,成長が遅れるばかりか,共食いすることもあり,十分与えなければなりません。給餌の目安は,腹が真っ赤になって膨れるまで食べさせ,多少食べ残しが出るくらい与えます。

シュリンプの死骸が底に溜まると,ピンクのジュータンの如くなりますが,これを無闇に取り除こうとすると水質悪化が加速しますので,次の水替えまで放置します。どうしても取り除く必要がある場合は,ビニールチューブで吸い出す方法もあります。

10日後位からは,ミジンコが採集できればこれに切り替えます。ミジンコは稚魚用の餌としては最高で,一度に一日分与えても大丈夫ですし,水を浄化する能力を持っているため,水質悪化の心配は皆無で,理想の餌ですが,近年採集が困難になって来ており,シュリンプ一本でやっている人も多いのではないかと思われます。

順調に生育し,35日程度経過しましたら,アカムシを食べられるようになりますので,たいへん楽になります。
ブラインシュリンプの湧し方
ブラインシュリンプは,@2.0〜2.5%食塩水,A水温25〜28℃,B強めのエアーレーション…の3条件をクリアすれば24時間で孵化します。そして,C卵の殻と生体の分離,D塩水と生体との分離作業を行って魚に与えます。

孵化作業自体は,さほど難しいことではありませんが,毎日頻繁にこの作業を繰り返すとなると,結構労力を必要とし,出勤前の朝方などは,手際よく短時間で作業を済ませないといけませんので,装置等を工夫をして合理的に行なう必要があります。

専用孵化器も市販されていますが,かなり高価であるため,私は手作りの装置(参照…私の工夫)を使用しています。工夫の要点は,@ヒーターでの湯煎,Aエアー注入口とシュリンプ取り出し口との併用,B卵の殻と生体との分離方法(殻は上部,生体は下部に集まるため,下から生体を取り出す)…といったようなところです。

塩水と生体との分離は,細かい網で濾しますが,これを真水で洗って塩分を取り除く人もいますし,そのまま与える人もいます。この程度の塩分では毛仔に悪影響を及ぼすことはないため,私はそのまま与えています。また,少々塩分が入った方が,シュリンプが長時間生きられるとして,塩水ごと給餌する人もいるようです。
稚魚の取り上げと水替え
シュリンプを与えると,どうしても水質の悪化が早く,餌付けから1週間程度が水質維持の限界ですので,第1回目の水替えを行いますが,これがなかなか大変な作業です。

この時期の魚は,とてもひ弱ですので,かなり慎重に扱わないといけませんが,5000尾程度の毛仔を1尾ずつ掬う訳にもいかず,網目の細かい屑籠のようなものを使い,ホースでゆっくり水を抜き,毛仔が吸い込まれないように注意し,また,逃げ遅れた魚は水で流しながら,魚溜まりに魚を集めて洗面器等に取り上げます。

杓子等で水ごと掬って取り上げるのが理想ですが,この時期はまだ尾が開いてないので,網を使っても魚を傷つけることは少ないようです。そして,洗面器のゴミ等を取り除き,新しい池に放って,このやっかいな作業が終わりますが,魚への負担を軽減するため,迅速かつ慎重な対処が求められます。

なお,10日間隔の水替えでは,ミジンコを使用しない限り,水が保ちませんので,この間1〜2回は,底水を捨てて差し水をするという作業も必要となるでしょう。
稚魚の選別
早めに不良魚を淘汰して,数を減らせば,毛仔の成長が促進されますので,選別はなるべく早くするのが良いのかもしれませんが,尾が完全に開き切るまでに拙速に行うと,素質魚をハネてしまうという危険性が大いにあります。

せめて,フナ尾,曲がり等の明らかな不良魚は,早めにハネておきたいところですが,この選別方法では,大変な手間がかかる割に魚の数が減らないので,あまり合理的な方法とは言えませんし,また,この方法で魚の数が大幅に減るようでは,魚のデキに問題があると言えます。

できれば,第1回の水替え時に2池に延ばし,第2回の水替えとなる孵化後20日前後には,尾開きがハッキリし,サシ尾,摘みもほぼ判別できますので,その時点で厳格な選別をすることが理想ではないかと思います。

この選別で,手のひらをパッと広げたような形の四つ尾の魚が1割以上,1腹で500尾以上残れば,まずは成功と言えるでしょう。